カフカ『変身』のラストシーンが好きだ。
ある日、大きな虫になってしまい、部屋から出られなくなったグレゴール・ザムザ。辛い展開の物語は最初からほぼ最後まで、彼自身の頭の中の声で進んでいくのに、その死のあと、突然、視点が変わる。
家族がトラムに乗り、どれだけの時間が経ったのかを互いを見合わせて実感しながら、物語は不思議な爽やかさのうちに終わる。風に溶けていくように終わっていく。
変身、ドイツ語ではDie Verwandlungとなる。姿かたちが変わるという言葉の意味もあるが、存在や本質が別のものになる、関係性が変化するといった意味もある。
