霧を眼前にし、霧に包まれゆく人を見る。

次第に空と地、そこに在る存在の輪郭が溶け合い、

それを見つめていた私も、やがて霧の中に消えていく。

霧が晴れると、存在はまた立ち現れてくる。

2025年の万博会場では、シグネチャーパビリオンの中央の広場で、時報のようにして大規模に霧が発生し、そこに人々が包まれる。

「いのちかがやく 未来社会のデザイン」をテーマに掲げた博覧会では、世界中の人がそれぞれのかたちで「いのち」と向き合うパビリオンが並ぶ。

展示によっては正面から「生と死」の考察が描かれる。

霧が広がり、ひとつの「個」という存在が消え、

もっと大きな存在へと溶け込んでいく。

原核細胞が、やがて真核細胞へと進化したように。

それぞれは、それぞれとして生きていて、機能している。

どこか、現在のLLM型AIのあり方を逆説的に見つめるようでもある。

宇宙や生物の循環は、決してひとつのかたちにとどまらない。たとえば「鉄」という元素。

それは、星の超新星爆発によって生まれる。

だから、私やあなたの身体を流れる血も、AIを動かすGPUも、地球のコアも、かつて存在し、いまはもう消えた星々の終わりから始まっている。

それらの星は、いま空をどれだけ見上げても、もう目にすることはできない。

けれど、そのかけらは、時を超えて、確かに私やあなたという存在につながっている。


Date

Category:

Writer